事例2
設計事務所B社 設計部 工場
労働環境改善のため、空調設備を導入した工場を設計することとなったが、
工期、ランニングコストの面から施主に難色を示されてしまった。
背景
工場の案件を依頼され、オーナーからのリクエストに試行錯誤を繰り返している設計事務所B社。2000㎡の鉄骨造の工場で空調設備を導入し、労働環境のよい工場とすることを要求されていた。また、オーナーは、短工期化およびランニングコストの削減を求めており、設計は難航していた。
B社はまず、外壁材を「鉄板と石膏ボード」とし、内装を現しとすることで、短工期化を提案。イニシャルコストも削減でき、オーナーの評価はある程度得られた。
しかし、次に実施した空調設備設計で、冷暖房費が想定以上に高くなることが判明し、オーナーに難色を示された。そこで、建物を高断熱化することで冷暖房費を低減できることに注目し、「充填断熱工法(繊維系断熱材を鋼製の胴縁間に充填)」で設計した。この工法の場合、内装は現しとできないため、別途内装材を施工する設計とした。
しかし、オーナーに様々な指摘を受け詳細に見直した結果、以下のことが分かり、再度設計提案することになった。
01
「内装現しとできない充填断熱工法」では、初期の設計より工程が増え、工期が長期化する。
02
安価な断熱材を使用したとしても、内装材施工用の足場が追加で必要となり工事費が上がり、トータルでイニシャルコストが初期より上がる。
03
鋼製胴縁が熱橋となり、結露の可能性が高まる。空調設備を導入するのは労働環境の改善のためであり、カビ等の発生につながる結露の可能性が上がることは本末転倒。
施主の要求
01
ランニングコストを極力抑えた上で、よりよい労働環境が提供できる工場とすること。
02
工期を短くすること。また、イニシャルコストの削減。
課題
01
高断熱化による冷暖房費の削減。
02
極力結露しにくい納まりとする。
03
手間のかかる納まりを避け、短工期化を図る。
解決のポイント
不燃材料認定を取得した断熱材である「ネオマフォームFS」20 mmを
鉄骨躯体の外側に設置する「外張り断熱工法」とし、熱橋のない納まりとした。
内装を現しとできるため、充填断熱工法と比較して、内装材施工に要する4つの
工程を削減できた。また、トータルコストが充填工法よりも安価になった。
「外張り断熱工法」のため熱橋がなく、結露の可能性を低減できた。
また、繊維系断熱材の垂れ下がりによる経年劣化の懸念も払拭できた。
ネオマフォームFS:金属外壁 準耐火建築物用途(壁30分防火構造)
ネオマフォームFSは、ネオマフォームと普通石膏ボードの複合製品です。 角波鉄板、スパンドレル鋼板との組み合わせで壁30分防火構造認定を取得しています。 不燃材料認定も取得しているため、準耐火建築物(ロ準耐2)に適応可能です。 (アルミ外装材は認定外)
※本認定をご使用の場合認定書をご確認いただき、記載内容を遵守してください。
ネオマフォームFS:金属外壁準耐火建築物用途(壁30分防火構造)
【U値比較:GW100㎜充填工法とネオマFS20㎜外張り工法】
【結露比較:GW100㎜充填工法とネオマFS20㎜外張り工法】
【工程比較:GW100㎜充填工法とネオマFS20㎜外張り工法】
【総合比較:GW100㎜充填工法とネオマFS20㎜外張り工法】
副次的効果
光熱費の削減、工期の削減を目的として、ネオマフォームFS20mmの外貼り工法を、
他の工法の代わりに設計したB社、その結果今回の工場案件を受注した。
そこでは副次的な効果として、下記のようなものがオーナーに評価されていた。
01
トータルコストが充填工法よりも安価になった。
02
繊維系断熱材を使用しないことで、垂れ下がりによる経年劣化の懸念も払拭できた。
03
延焼ラインの内側は、不燃材料認定品の「ネオマフォームFS」を使用した防火構造、また、延焼ラインの外側は、不燃材料認定品である「ネオマフォームF(ネオマフォームFSより安価)」を使用し、ロ準耐-2の「準耐火建築物」とした。 この結果、高価かつ工場の使用に支障をきたす防火壁の設置を省くことができた。
法第26条:防火壁について
延べ面積1000m2を超える建築物は1000m2ごとに防火壁で区画しなければならない。
ただし、耐火建築物または準耐火建築物は、しなくてもよい。
(なお、卸売市場の上家、機械製作工場、畜舎などについては別途緩和条件あり。)
04
今回、採用はされなかったが、「ネオマフォームFS 25㎜壁(30分)耐火構造認定」を使った、比較的安価な「耐火建築物」とする設計も提案した。(これは、天井の仕上げも難燃材料とすることで、屋内消火栓設備設置の基準が2100㎡まで緩和でき、(2000㎡の本物件では)コストダウンに繋がる)このように、大きく納まりを変更することなく、様々な視点からのコストダウン案を提案することで、次回以降の足掛かりとなる施主の評価を得ることができた。
ネオマフォームFS25:金属外壁 耐火建築物用途(壁30分耐火構造)
ネオマフォームFSは、ネオマフォームと普通石膏ボードの複合製品です。 角波鉄板とネオマフォームFS(FS-25限定)との組み合わせで壁30分耐火構造認定を 取得しています。(アルミ外装材、スパンドレル鋼板は認定外)経済性にも 優れた仕様です。
※本認定適合製品は品番FS-25のみです。
本認定をご使用の場合認定書をご確認いただき、記載内容を遵守してください。
耐火建築物用途(壁30分耐火構造)
消防法施行令第11条:屋内消防設備設置の緩和について
工場は700m2以上の部分に屋内消火栓設備を設置しなければならない。
(ただし、地階、無窓階、4階以上の階は、150m2以上)
但し、下記の緩和がある。
- 「主要構造部を耐火構造、かつ、壁及び天井の室内仕上げは難燃材料」とした場合2100m2の部分
- 「主要構造部を耐火構造」とした場合「準耐火構造かつ壁と天井の室内仕上げは難燃材料」とした場合1400m2の部分